♯moserlover オーナーズボイス Vol.1

2021.12.03

“H.モーザーの時計は、男を成長させてくれるんです”
A氏

【PROFILE】
神奈川県在住、会社経営、A様
H.モーザーを8本所有していらっしゃるA氏。2018年の出会いから、H.モーザーの時計の美しさに取り憑かれるように魅了されてしまったという。A氏が感じたH.モーザーの類ない魅力とは? 最初の出合いから今日の想いまで、ご愛用されている貴重なコレクションを拝見しながら話を伺った。

取材・撮影=レフトハンズ

―ため息が出るほどの素晴らしいコレクションをお持ちですが、H.モーザーの時計を収集されるようになったきっかけをお聞かせいただけますか?

A:実はつい数年前まで、時計は時間を見るためのものだと思っていました。だとすれば携帯でも確認できますし、時計を所有することに関心がなかったんです。ところが、あるボランティア活動で5、6時間くらい子どもたちと海に入ることがあり、ダイバーズウォッチの必要性に迫られてお店に見にいくと、ダイバーズウォッチにも様々なものがあることを知りました。面白く感じて数本購入すると、その内にダイバーズウォッチ以外にも関心を抱きはじめて、時計屋さんを巡るようになったんです。

H.モーザーとの出合いは、2018年の夏だったでしょうか。ISHIDA 新宿さんに招待されたウォッチフェアで、赤のダイヤルにトゥールビヨンが搭載された2針モデルを見て、心を奪われました。赤い色が人の心臓を彷彿させて、時計そのものが生きているように感じられたんです。あまりの美しさに魅入っていたら、販売の方が歴史をはじめ様々なことを教えてくださり、以来、H.モーザーというブランドが気になって仕方なくなってしまいました。

ネットや雑誌で夢中になって調べて、お店にも訪ねるようになって。そうして翌年の年明けにoomiya 心斎橋店さんで購入した最初の1本が、このブルーラグーンカラーの手巻きの「ベンチャー」です。2018年に販売されていた最後の1本でした。さらに3カ月後の春に、同じ色の自動巻きが新作として発表されました。すっかりこの緑の美しさに魅了されていたものですから、居ても立っても居られず、NX ONE を訪れてみたのです。するとH.モーザーのブランドマネージャーさんが、本国から見本を持って日本に到着したばかりだとのことで、すぐに駆けつけてきてくださり、即座に買うことに決めました。

▲ベンチャー・コンセプト / 手巻き、18KRGケース、径39mm、世界限定20本。

A氏が買い求めた最初の1本は、手巻きの「ベンチャー」。ミニマルで無駄のない「レス・イズ・モア」のコンセプトが、A氏の美意識と共鳴した。

―それは素晴らしいタイミングでしたね。そうして2018年の夏の出会いから翌年の春までに2本購入されて、今では8本も所有されていらっしゃるんですね。

A:すっかり取り憑かれてしまいました(笑)。

―この最初の1本は何が決め手となったのでしょうか?

A:フュメダイヤルの色の美しさと、インデックスもない2針だけのシンプルさです。ブランド名を打ち出すことが当たり前な世の中で、この時計のダイヤルにはブランド名さえなく、削ぎ落とされた美しさを感じました。まるで芸術品のようだと。H.モーザーの時計と出合ってからは、時計という芸術作品を身に着ける楽しみを知りました。人によっては時計にステータスを求めたり、様々な選択基準があるかと思いますが、僕はアートのような感覚のものを身に着けたくて、H.モーザーのこの時計であればいいな、と感じました。

▲ベンチャー・コンセプト / 手巻き、18KRGケース、径39mm、世界限定20本。

ブルーラグーンという名の色が、いつか訪れてみたいエルニドの海を彷彿させたという。

―緑の色も宝石のように美しいですね。

A:ブルーラグーンという名の色ですが、実はフィリピンのエルニドに行きたいなとずっと思っていまして。実際にフィリピンの別の場所に訪れた時はイメージしていたのとはかなり違いましたが、まだ訪れたことのないエルニドのイメージだけは僕の中で膨らんでいたんです。そんなことから、ブルーラグーンという名前に惹かれました。ちなみにこの紫の色はジミ・ヘンドリックスの「パープルヘイズ」からネーミングされているそうです。僕の時代だとプリンスの「パープルレイン」も印象的で、そのイメージもありましたが、やはりダイヤルのイメージからするとレイン(雨)よりも、スモーキーなヘイズ(噴霧)が素敵ですね。H.モーザーにはネーミングのセンスの良さも感じています。
スモーキーがかった紫の色に魅了されたというパープルヘイズカラーの「エンデバー」。

▲エンデバー・センターセコンド / 手巻き、18KRGケース、径40.8mm。

A:一番最近購入したのは、こちらです。この箱の最後のスペースを埋めたくて探して、出会いました。僕が大好きなコンセプトダイヤルにギョーシェ彫りがあしらわれていて、好きなものが2つ融合している、まさにアートそのもののような作品です。世界で10本、日本で1本しか入荷しなかった限定モデルでした。
かつて懐中時計の裏蓋に施されていたギヨシェ彫りをダイヤルに再現した「エンデバー・ コンセプト ギョーシェ リミデッドエディション」。世界限定10本と希少性も高く、類ない工芸品としての美しさを放つ。

▲エンデバー・コンセプト ギョーシェ リミデッドエディション / 手巻き、18KRGケース、径38.8㎜、世界限定10本

―こちらのデュアルタイムモデルは過去にわずかながら製造していたムーブメントを使ったユニークピースと伺いました。希少な時計ばかりですね。

A:このデュアルタイムモデルは、最初はブランド名が入っていたので少し悩みましたが、ユニークピースだということですし、今まで所有していない時計らしい時計だなと感じて購入しました。

―実際に購入されていかがでしたか?

A:実はまだこれを身に着けて外に出たことがないんです。この時計の貴重さを考えると、すごく大事にしたくて。僕が生きているうちか死んだ後かはわかりませんが、僕以上にこの時計を好きになる人が絶対に現れると思うので、次に欲しいと思う方に綺麗なまま渡したいな、と思って大切にしています。

―継承されていくのですね。

A:使命みたいな感じかな。箱入り娘のように、世の中の荒波に傷つけられたらどうしよう、みたいな感じです(笑)。自宅で僕だけが見ていて、たまに外で見たい時には、携帯で画像を見たりしています(笑)。

▲エンデバー・デュアルタイム / 自動巻き、18KRGケース、径40.8㎜、ユニークピース。

世界限定1本の貴重なユニークピース。次世代へと手渡すために、大切に保管しているという。

―これだけ愛でてくださって、H.モーザーさんもきっと嬉しく思うことでしょう。

A:H.モーザーの時計は、希少性が高いという点でも魅力を感じています。人と被らないですし、希少だからこそ芸術品を手にしているという感覚があります。しかも時計ですから、身に着けて持ち歩くことができる。絵画ではそういうわけにはいきません。実は、僕はキリムの絨毯も好きなんですが、さすがに絨毯も持ち歩けませんしね(笑)。
他にも、好きで収集している琥珀も貴重で、それぞれにロマンやストーリーがあります。何万年も前に化石化したものが世に出て、縁があって手にすることができるというのは、まさに奇跡ですよね。キリムもかつて遊牧民が作っていたもので、今は国が戦下にありますから、残っていること自体が奇跡なんです。それと同じように、こうした時計を持てることも奇跡のようだな、と。そういうところに僕は惹かれてしまうんだと思います。時計も各社ストーリーとドラマがありますが、H.モーザーには他社にはない魅力があります。もともと作っている数が少ない中での限定品なので、より希少性が高いですし、何より他にはない美しさに夢中になっています。

―H.モーザーの時計を集めるようになって、ご自身の中で変わったと感じることはありますか?

A:人格が変わったような気さえしています。着る服も、以前は本当にカジュアルだったんですが、この時計に合う服はどれかな? と考えるようになりました。生地や色が気になるようになって。好きだったキリムや琥珀についても、もっと知りたいという気持ちが高まりました。時計を起点に、モノを見る目が深くなったように思います。もともと芸術的なものが好きだったのかもしれませんが、H.モーザーには時間を知らせる以上の価値がありますから。時計は、単純に時間がわかればいいと思っていたのが、その違う魅力に取り憑かれ、魅せられて、その奥深さを身をもって知るようになりました。

▲エンデバー・コンセプト / 手巻き、パラジウムケース、径38.8㎜。

どのモデルも、A氏のシックな装いにエレガントに馴染んでいた。

今は製造されていない希少なパラジウム製ケースも氏のお気に入りだ。ファンキーブルーと称されるダイヤルカラーは、グレイッシュな中に魅惑的な青味が潜む。

A:さらにCEOの方にもお会いし、一緒に食事をする機会もいただいて、人生にはこんなことがあるんだな、と。2019年の末にU2が来日した際には、U2のメンバーの一人がH.モーザーの愛好家だということでお会いして、コンサートにもお招きいただき、楽屋まで伺ったんです。本当に、普通ではあり得ない経験をさせていただきました。

―ブランドの価値を理解されていらっしゃるからこその機会ではないでしょうか。同じ価値観を共有する仲間たちと、国境を超えて美意識や感動を共有できるのは素晴らしいことですね。

A:本当に良いタイミングで知ることができたと思います。2019年は、今考えると僕とH.モーザーの関係は濃かったな、と。興味を持って好みの時計を探している中で、引き寄せられるように色々な偶然が重なったんです。最新作の見本が到着したばかりの日に店を訪ねたことも、他のオーナーの方とお会いできたことも、U2のコンサートに行けたことも。改めて後から冷静に考えると、そうそうあることではないな、と思っています。

―ご縁のように、あるべきこととして起こったのではないでしょうか。

A:時計屋さんに行くと「時計も人を選ぶんですよ」とよく言われますが、自分もこの時計に選ばれたのかな、と勝手に思っています(笑)。ふらっと訪ねて、偶然に出合うというのも奇跡のようですよね。そういうことは大事にしたいと考えています。そうしたら、いつの間にかこんな風になってしまいましたが(笑)。

▲パイオニア・センターセコンド / 自動巻き、ステンレススチールケース、径42.8㎜、世界限定50本。

A:これは初めてのステンレスモデルで、2021年の夏に購入しました。日本の夏は蒸し暑いし、ステンレスはやはり日常的に使いやすいですね。

―お話から、人生の豊かさを感じます。今後はH.モーザーさんとどのようなお付き合いをしたいとお考えでいらっしゃいますか?

A:エレガントなのにエッジの効いた洒落心があり、自社で作り上げていてモノとしてもいい。そういうすべての要素を含めて、今のままでいて欲しいと感じています。メーカーとして踏ん反り返っていないところもいい。プロモーションにもユーモアと遊び心があるから、これからも楽しく見させていただきたいと思っています。

さらに言うと、H.モーザーさんには僕が生まれる前からの歴史があり、僕がいなくなった後もその歴史は続くでしょうから、永遠と続く先を大いに期待しています。人間の生命には限りがあるけれど、機械は技術者がいれば、人間より長生きしていくものですからね。今僕の手元にある時計が、いつか僕と同じように、あるいはそれ以上に思ってくれる人の手に渡るという楽しみがあり、次の時代へと繋げていくべきブランドであり、モノかな、と日々感じています。

―アート作品が次の世代へと手渡されて、永遠に受け継がれていくのと同じような感覚ですね。モノという枠を超えて、時計に愛情を注がれていることが伝わってきます。H.モーザーの時計はこういう方に着けて欲しいというイメージはありますか?

A:自分はさておき、やはり良いものがわかる方、芸術的感覚に長けている方に着けていただくのが良いのではないかと思います。

2針だけのミニマルさゆえに、ダイヤルのギョーシェ彫りがより一層美しく浮かび上がる。

―美しいものに対する感性がある方、ということでしょうか?

A:そうですね。それと、男としてのセクシーな魅力を持っている人。成熟した大人の魅力と言っていいのかな。例えば、芸術に長けているとか、音楽のスペシャリストとか……。ふと思ったのですが、たぶんH.モーザーの時計がね、男を成長させてくれるんです。男のセンスや魅力を磨いてくれる、そんな気がします。

―それは素敵ですね。

A:僕自身、H.モーザーを知って手にしてから、ものごとをより深く追求していこうと思うようになりました。好きだったキリムや琥珀にしても、以前は入り口から一歩か二歩入った程度だったものが、H.モーザーをきっかけにもっと深く入り込んでいくようになりました。歴史やストーリーを含め、“本物を見極める”ための勉強をするようになったんです。
H.モーザーと出会って、探求する喜びを知った……そう思います。

▲ベンチャー・コンセプト / 手巻き、18KRGケース、径39mm、世界限定20本。