創業者と未来への想いを込めた時計「パイオニア コレクション」連載Vol.2

2021.07.20

時計愛好家のディテールしかも毎日、特別な配慮なしに着けて楽しめる「パイオニア コレクション」。
時計愛好家が絶賛する「H.モーザー」のコレクションの中で、どんな人にもおすすめできる、どんな人でも楽しめるのが、2016年にスタートした「パイオニア コレクション」。その開発ストーリーと魅力について、ウォッチジャーナリストとして活躍される渋谷ヤスヒトさんに解説いただきました。連載全3回の第2回目はパイオニアコレクションのデザインや造形について紐解いていきます。

機能美を巧みに追求したデザイン

ブランドをけん引する若きCEO(最高経営責任者)エドゥアルド・メイラン氏が経営に参画した当初から思い描いていたパイオニアコレクションの魅力。それは、他のコレクションを超えた基本機能と文字盤のカラー・バリエーションの豊富さだ。2016年に複雑時計の「パイオニア・パーペチュアルカレンダー」からこのコレクションのストーリーは始まっている。

現在はスタンダードな3針モデル、さらにトゥールビヨンモデルも加わった。
その基本デザインは他のコレクションと同様にシンプル。しかも、だれが見てもひと目でH.モーザーの腕時計とわかる唯一無二の個性を備えている。だが、ディテールやスペックは、他のコレクションとは大きく異なっている。
パイオニア コレクションの他のコレクションにはない大きな特長、そして魅力は、文字盤の優れた視認性と、ケースの高い防水性。そして、美しい「フュメ ダイヤル」のカラー・バリエーションの豊富さだ。

特徴的な文字盤デザイン

まずは、視認性を大きく高めた文字盤デザインからご紹介しよう。
ドーム型に優雅に立ち上がった文字盤、手作業によるラッカーの吹付け作業で文字盤中央から周辺部に向かって、繊細で味わい深いグラデーションが付けられた「フュメ(フランス語で『煙』。立ち上がる煙のような微妙なグラデーションがあることからこう呼ぶ)」ダイヤルは、他のコレクションと基本的に変わらない。

ただ、文字盤のディテールには「パイオニア」独自の、ひと目でわかる大きな特徴がある。それが、アワーインデックスと2本の針の形状だ。
インデックスがシンプルなバータイプで、印刷ではなく植字による立体的な構造なのは他のコレクションと同じ。ところが、太さと形状がまったく違う。
インデックスの面積は大きく、しかも山型にファセットカットが施されている。だから光が当たった際の輝きが格段に大きい。しかも、インデックスの外側にはドット(丸)のインデックスもプラスされ、さらに視認性を高めている。

時、分、秒を表示する針のデザインも、他のコレクションとは違う。最もスタンダードなモデル「パイオニア・センターセコンド」は、これまでH.モーザーのアイコンともいえたスモールセコンド(小秒針)ではなく、そのモデル名の通り、秒針の位置が時針、分針と同時に読み取れる、秒針が時針、分針と同軸にあるセンターセコンド(センター秒針)タイプだ。
そして時針と分針は、他のコレクションと同じリーフ針タイプだが、その形状も大きく違う。ひと回り太く、中心に近い部分がスケルトン化しされているタイプが基本。そして、中央から先端部にかけて蓄光塗料のスーパールミノヴァ®が塗布されており、暗所化での視認性も申し分ない。
さらに2021年の新作「パイオニア・センターセコンド メガ・クール」では、さらに新しい仕様が採用されている。アンスラサイトグレーの針の表面にはスイスのゼノ・プリント社製の、蓄光塗料のスーパールミノバを含有するセラミック系の「グロボライト」という最新素材が採用され、針そのものが蓄光するため、より確実に時刻が読み取れるように進化した。

だからパイオニア コレクションの腕時計は、他のコレクションの腕時計より、暗い場所でも確実に時刻が読み取れる。

優れた防水性

次に見逃せないのが、優れた防水性だ。
他のコレクションの腕時計が「日常生活防水」つまり3気圧防水なのに対して、パイオニア コレクションのケースの防水性は、ネジ込み式リュウズを採用することで、スポーツウォッチの標準的な10気圧防水を超えた、12気圧防水にまで高められている。これだけ防水性が確保されていれば、スポーツするとき、アウトドアでのアクティビティにも安心して着けていける。

つまり、パイオニア コレクションの腕時計はどれも時間が読み取りやすく、安心して使える。“毎日着ける腕時計”に、これほどふさわしい製品はない。これは若きCEOのエドゥアルド・メイラン氏がまさに意図したこと。パイオニア コレクションは“いちばん機能的で使いやすいH.モーザー”なのだ。

豊富なカラーバリエーション

そして、この“機能性と使いやすさ”に加えてもうひとつ、絶対に見逃せないパイオニア コレクションの大きな魅力が、「フュメ ダイヤル」のカラー・バリエーションの豊富さだ。
一例をあげると2021年の新作「パイオニア・センターセコンド メガ・クール」の「トロピカル オーシャン カラー」を筆頭に「コスミックグリーン」「スイスマッドレッド」など、着けただけで元気になれる、鮮やかなカラーがラインナップされている。

左から「パイオニア・センターセコンド メガ・クール」、中「パイオニア・センターセコンド コスミックグリーン」。右「パイオニア・センターセコンド スイスマッドレッド」

この中には、他のコレクションでは限定モデルでしか楽しめなかった色も、レギュラーモデルとしてラインナップされている。つまりパイオニア コレクションでは限定だった魅力的な文字盤カラーを、誰でも楽しむことができるのだ。
文字盤の中央から外側に向かうほど色が微妙に濃くなっていく、立ち昇る煙(フュメ)を彷彿させる絶妙なカラー・グラデーションのフュメ ダイヤルは、H.モーザーが2005年に復活した当初は存在していなかった。2008年に最初のグレー、その後ブルーが登場したが、アイコニックな存在にするべく、バリエーションを拡充させたのがCEOのエドゥアルド・メイラン氏であった。今ではブランドの最大のアイコンであり、ビジュアル面でいちばんの魅力でもある。
円型に成型した真鍮製の文字盤には、放射仕上げが施される。さらにこの上にメッキを掛ける。その上に発色が美しいラッカーを極薄に、スプレーガンを使って手作業で、微妙なグラデーションを付けながらひとつひとつ丁寧に何層も吹き付ける。さらにその上に極薄にクリアーラッカーを吹いて仕上げる。このフュメ文字盤の製作だけで、何と200を超える工程が必要だ。

しかも文字盤の下地仕上げ次第で、上に重ねるラッカーの発色や輝きが大きく変わる。また、ラッカーのペイントの具合は、ひとつひとつ微妙に異なるから、厳密に言えば、同じ文字盤はひとつもない。だから、唯一無二の時計を持つ喜びがこのフュメ ダイヤルの腕時計にはある。
この文字盤の、本当の繊細な美しさは、このウエブのデジタルコンテンツの、ヴァーチャルな画像では、残念ながら体感することはできない。NX ONE GINZAに足を運んで、あなた自身の目で確認して頂くしかない。

3種類のストラップ

さらに最後にもうひとつ、パイオニア コレクションの魅力としてぜひお伝えしておきたいのが、フュメダイヤルのカラー・バリエーションと同様に豊富な、ストラップのバリエーションだ。レザーストラップ、ファブリックストラップ、そしてラバーストラップ。3種類の異なる素材、テイストのものが用意され、シーンや気分に合わせることができる。

ステンレススチール製のモデルには同じくスチール製のブレスレットも取り付けることができる。
基本デザインがより現代的で機能的だからだろうか、ストラップの素材を変えると、時計全体の印象が大きく変わる。つまり、1本でさまざまなテイストが楽しめる。だから、ビジネススーツからデイリーカジュアル、週末のスポーツカジュアル、さらにスポーツスタイルまで、多彩なスタイルに対応できる。
これも、パイオニア コレクションの見逃せない魅力のひとつ。まだの方は、ぜひ店頭で、実物の魅力に触れてほしい。

文=渋谷ヤスヒト